鮮やかなオレンジ色が目立つモンシロチョウの仲間・ツマベニチョウ

■西表島の身近なチョウ

ツマベニチョウは西表島に分布する蝶の中では、それほど目立つ存在ではありませんが、「竹富町の蝶」に指定されています。少し増えたらいいなと思い、庭に植えていた食草の苗木の葉が、たくさんの虫に食い荒らされていました。怒り心頭、2匹目を弾き飛ばしたところで気づきました。そう、ツマベニチョウの幼虫だったんですね。


ツマベニチョウはシロチョウ科に属しています。シロチョウ科は世界に約1,100種、日本には32種が分布しています。中型の蝶のグループで、日本で最も身近な昆虫のモンシロチョウやキチョウはこのグループです。日本列島の市街地や平地で見られる白い蝶のほとんどはモンシロチョウですが、西表島ではナミエシロチョウやウラナミシロチョウなどの熱帯系のシロチョウが多く見られます。


もともと沖縄にはモンシロチョウは分布しておらず、戦後にキャベツなどのアブラナ科の栽培植物とともに移入してきた外来種。したがって、西表島で白い蝶を見かけたら、紋の有無を見ることによって、熱帯ならではの蝶を楽しめると同時に、モンシロチョウのはびこり具合を実感することができます。



ナミエシロチョウ(「村松佳優の昆虫写真図鑑ムシミル」より)

■ツマベニチョウの生態について

ツマベニチョウは南アジアから東南アジアにかけて分布しています。日本では琉球列島から九州南部にかけて見られ、自然分布の北限は宮崎県鵜戸神社です。シロチョウ科で世界最大級の種です。モンシロチョウは前翅長(翅の根本から翅頂までの長さ)25〜30㎜、開帳(翅を開いたときの幅)50〜60㎜ですが、ツマベニチョウは前翅長40〜55㎜、開帳85〜100㎜になります。日本最大のオオゴマダラ(マダラチョウ科,前翅長60〜75㎜,開帳130㎜)には及びませんが、アオスジアゲハ(前翅長32〜45㎜,開張80〜85㎜)よりも大きくなります。熱帯を代表するシロチョウであり、この蝶に一目会いたいと訪れる人も少なくないようです。


食草のギョボク(フウチョウボク科)は、3出複葉の葉が特徴です。釣りの疑似餌を作る木として知られ、知り合いの技術科教諭はこの木でイカ用の餌木を作って「これが釣れるんだよ」とニヤニヤしていましたが、本当に釣れたかどうかはわかりません。


卵から成虫になるまでに一月前後かかります。最初は普通の青虫ですが、終齢幼虫になると、胸部に目玉のような模様が現れ、見事にヘビの頭に擬態します。年に4〜5回発生するようです。

食草のギョボクの幼木。3枚の複葉でなくなっている葉も


■幸せを呼ぶ…?

検索すると「幸せを呼ぶチョウ」と書かれることが多いのですが、原説が何かは全くわかりませんでした。少なくとも西表では、そのような話は聞いたことがありません。それどころか最近は有毒の蝶としても注目を集めました。


毒蝶はマダラチョウ科やアゲハチョウ科の一部で知られています。アルカロイドを含む食草を食べることによって毒を蓄積し、捕食者から身を守っています。ツマベニチョウではアンボイナ(イモガイ科)の毒として知られるコノトキシンが、成虫の翅や幼虫の体液に含まれていることがわかりました。鱗粉等には含まれないので触っても全く問題なく、これまでに蝶を触っていた子供の変死事件は一件も起きていません。また、コノトキシンはイモガイ類全般が持っているわけでなく、魚食性の一部の種に限られています。


我家のギョボクの苗木は葉が6枚しかないので、幼虫たちには他所の大きなギョボクに引っ越してもらいました。そこにもたくさんの小さな幼虫や卵がありました。幼虫の大きさから判断して、5月20日頃からたくさんのツマベニチョウが見られそうです。

ギョボクにいた幼虫。このあと、大木に引っ越ししてもらいました